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1998年9月

夏季保育での実践を通じ、
保育園の使命の重大さを痛感し、
私立保育園が地域起こしの核としての
役割を果たす責務を深く感じる。

夏季の保育を終えてこれから第2期の保育に入ります。

4月の入園から5ヵ月、初めての集団保育を親子共々体験され、集団保育の子どもの成長に於ける役割の大切さを実感された方も少なくないと思います。

また、4月から新しいグループになったり、担任も変わったりの新鮮さの中で楽しさを味わいながら九月からの第2期の保育に取り組みます。

自然も、春の種まきに始まり、夏の太陽と水とさまざまな恵みによる成長を経て、これから実りゆたかな秋を迎えます。私達人間も、心身共に壮健に成長していく充実期の秋。生涯の良き思い出となる運動会のために、夏季保育中に運動会の実行委員会で、テーマを決め具体的な取り組みを協議し、9月の保育の中に盛り込んでいきます。また、豊かな感性を育てるために絵画や音楽、絵本などの保育に取り組み、人間として楽しく心豊かに生きる力の基礎作りを乳幼児期にしていける、そんな保育を夢見て職員は頑張っています。

保育・教育は人であり、保育する人がどんな心で、どんな子育てを目指しているか、その目的理念がしっかりしていないと本物は育たない。

私も、何のために保育園を作り、そこで子ども達にどんな体験をさせ、どんな人間形成をさせるか、この子達がどんな夢を持って、その夢を実現するためにどのように努力するか、創立以来30余年ずっと自らに問続けてきた。どんな保育をし、その成果はどんなものか、それは世のため人のためになるのだろうか。

願い続けていることは必ず叶う。

この夏の甲子園大会の岡山予選では、関西高校や作陽高校など、いくつもの高校で本園の卒園児がレギュラー選手として活躍する姿に出会えた。またボクシング大会で優秀な成績を修めるなど、それぞれの分野で活躍し、充実感を味わい、自信を持って自分の人生の活路を開いていく姿を見ることはこの上ない喜びです。

今年は不況風が吹き、失業率約4%、倒産件数も増加し、日本が世界不況の引き鉄になるのではないかとさえ言われるほど、これからの見通しは危うい。

8月初め、橋本内閣総辞職、小淵内閣が登場し、経済企画庁長官に堺屋太一氏が民間人として起用された。前の経済企画庁は、日本の景気を「先行き停滞」と表現していたが、新内閣は「先行き低迷」と訂正し、日本の経済の深刻さを国民に明示した。

日本経済の低迷は、中国を始め東南アジア諸国の経済恐慌につながるため、世界から日本経済を立て直すような経済政策を要望される程深刻いる。

今年は異常気象で中国地方から北陸地方にかけて梅雨開け宣言がなされないまま夏が終わってしまう。さらに北陸・東北・北海道は低温で関西は高温という、気候の不順から水稲の不作も予想される。

昭和恐慌の頃も、東北は冷害で飢饉が起こった。米の不作は不景気を一層深刻化させ、小学校の子ども達も弁当も持参できず、人身売買等が行われ、暗い社会情勢はさらに悪化し、戦争へとつながって行った。満州事変、日支事変、大東亜戦争、そして第二次世界大戦へと、混乱は拡大していった。そして空襲や原爆投下によって、日本全土が焦土と化し、敗戦を迎えた。

昭和初期の世界の経済的不況で日本の主要産業であった生糸の輸出価格は3分の1に暴落し、失業者は増大し、都市にはルンペンがたむろする悲惨な有様であった。

その時期と奇しくも自然までが同じ様相を示している。

保育園も不況風のなかで生きていくために厳しい時代を迎えている。夏季保育中はそれぞれの家庭で休んだり、旅行に行ったりして子どもの人数は減っているのが通例であったが、今年は子どもが休みをとることが少ない。特に0歳・1歳・2歳の3歳未満児の子どもは殆ど休まない。

園としては、昭和 年以来、保育者が職員研修に参加し、知識や技能を高め、研修報告をして保育の共通理解を深めてきた伝統を維持し、職員の質の向上を図るためにも夏季には出来るだけ手が空けられるように家庭保育をお願いしてきた。また日頃なかなか休暇の取れない保育者に少しでも休暇を取ってもらえるのは夏季保育の期間をおいてはない。そのほかさまざまな雑務も夏季保育中に片付けてきたが、今年はまるでそんな余裕のない状況であった。

また、夏も子育て支援のために、ドレミファパーク、園庭開放も積極的に行っている。

学童保育は平常は20名であるが、夏季には50名の申込み、しかも平常の放課後保育ではなく終日預かりである。保育者はいろいろな行事を計画し、人間関係を作り楽しい思い出を作るよう最善の努力をしてくれている。陶芸や美作での宿泊保育、科学博物館を見学したり、サーカスやチボリ公園、総社の厚生年金会館でのプール遊び、いろいろ製作して、夕涼み会の計画と準備など、家庭で暮らすより幅広く価値のある夏休みを過ごされたと思う。この生活体験を契機にそれぞれが夢を持ち、楽しく生きていく力の基礎が身につき、宿題もこなし、学校での今後の活躍が期待される。

週休二日制に移行すれば、学童保育の需要も増してくる。学童保育が定着し、それぞれの自主的な活動のなかで今の学校教育の中では十分育ちにくい生きる力を身につけられるよう配慮してやりたい。管理統制の中で、ではなく自主的な行動の中から自由に生きる力、豊かな発想は生まれる。

学童保育がただの学童預かりではなく、子どもの本来の力を伸ばす場所となって、日本の教育の変革につながることを望むものです。

教育は資格ではなく、その教育者の人柄・人格であり、社会の経験に磨かれた人格・識見・技術が子ども達の生きる力を育てるもとになると思う。

今の学校教育を根本から変革しないと人類は生き残れない。

文化は自由な発想から創造される。文部省が作った教育方針は、過去の教育の寄せ集めであり、そこから作られた教科過程の編成や教育制度の中からは、これからの社会に必要な、有能な人材は育たない。まして教育者の多くが教育の根本義の実践でなくサラリーマン化している現状では真の教育の扉は開かれない。

今年の夏季保育に約90名のボランティアが参加された。中学生・高校生が殆どで、それぞれ3〜5日、多い日で14〜15名、少ない日でも5〜6名来てくださった。できるだけ保育の価値や、子どもと関わり、子どもに学ぶ心を伝えるために全保育者が関わり気の休まる時もない夏季保育であったが、ボランティアの皆さんがそれぞれ得難い体験をしてくださって価値ある夏休みを過ごされたことを信じています。

少子化・核家族の生活環境に育って普段幼児に接する機会のない生徒がこの暑い中、保育に参加し、汗を流すという、これほど人生体験で有意義なことはなく、各自子ども達から教えられ、子どもの素晴しさに感動し、無我夢中で接した保育体験は、これからの人生の在り方にも大きな指標を与えてくれることと思う。それを期待するからこそ、私もボランティアを受け入れ職員も精一杯関わってくれたのだと思っている。

日本の教育の変革は、まず幼児に学ぶことから始まると思っているし、すべての大人、特に教育に携わるものが幼児に触れ保育体験を持つことから、子どもに対する、教育に対する考え方が変わってくる。その心を理解して欲しいと色紙に「学幼児」としたためて、ボランティアの皆さんにお配りした。

人間はさまざまな人や自然の恩恵を受けて生きている。それをもらうばかりではなく、返したり他の者に与えようとする奉仕の心は人間として当然のことであり、その奉仕の心と行動は結局その本人を成長させ、幸せをもたらしてきた。21世紀は心の時代と言われる。この心を持たない人間は社会から相手にされなくなる、そんな時代とも言える。

私立保育園の使命は、子育て支援を通じて、人間関係を密にしてそれぞれの心の融和を図り、子どもを中心として地域振興の拠点としての役割を果たすことである。この使命を果たすために子どもや老人はもちろん、社会の全ての人が楽しく交流できる地域起こしの核としての役割を果たす、そんな夢の輪を広げたい。

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