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1997年4月

それぞれの子供のそれぞれの可能性を発見し
認めることが親子の絆を育て
幸せな人生を送る第一歩である

平成9年度の保育が始まった。今年で創立31周年。この歴史と伝統の中に保育が生きている。

30年は瞬時に過ぎ去り、時の流れの速さに行動・実践が追いつかないことは慚愧のいたりです。このようにすれば良かった、あのようにしておけばという悔いは一杯あるけれども、後悔先に立たずという諺があります。そしてまた失敗があるから成功もあるので、近道をし、焦って何かをすることで思いも寄らぬ暗礁に乗り上げることにもなります。急がば回れ。世の中は理屈通りには行かない。いろいろな社会の柵みのなか、様々な個性・様々な感情をもった人がいて、考え方・見解はまちまちである。民主主義・自由主義といいながら私達はいろいろな規制や社会通念の中で生きて行かなくてはならない。考えてみれば誠に不自由であるとも言える。

そんな中で出来るだけ規制を受けず自由に生きられたら素晴らしいことである。自分の信念に従って自由に生き、人生を謳歌し生涯幸せであったといえたなら最高の人生と言えるのではないでしょうか。

「三つ子の魂百まで」を常に念頭に置いて、心の保育を目指して試行錯誤を繰返しながら、自分なりに保育の歴史を刻んできました。この考えを根底に置いて保育を構築し、常に変化する時代の風潮や行政の指導や保護者の一方的な都合に迎合したり屈服することなく、子どもの為になる保育とは何かを常に優先し模索してきました。常にいろいろなことを先取りし、保育内容の研究、施設整備に先行投資をし、借金に借金を重ねて、まだ充分とは言えませんが、子どもの夢を広げる保育環境づくりに励んできました。

保育制度は戦後、昭和23年に制度化され、戦前の託児所から発展し、保育所数約2万3千ヶ所、多いときで在籍総数200万、今は160万位となっています。年々膨れ上がる保育予算は措置費の予算が精一杯で施設整備に関する補助金はなく、施設整備は公立優先で、私立は船舶振興会などの補助申請はあるものの数に限りがあり、それとて莫大な自己資金を投入せざるを得なかった。

高島第一保育園はこの30年の間に小さな木造の園舎を建て増し、次第に現在のような鉄筋の園舎に移行してきました。保育園の補助金制度では、これだけの設備は難しく、全国でもこのような保育園は他にないと思っています。

その他、何はともあれ保育に必要なものは購入し使用し、保育内容の向上に役立つよう配慮してきました。

音楽にしても楽器がこれほど揃っている保育園は少ないと思っているし、絵本の保育にしても、貸出文庫を昭和48年に設置して以来、園文庫を充実し毎週貸し出しを行ってきました。

プール遊びは危険も伴いますが、6月始めにはプールを設置し、9月初旬まで約90日の間、こどもたちがプール遊びを楽しめるようにしてきました。プールの形態も大型ビニール製のものを使用したり、いろいろなものを使用して現在のものになりました。また当初は園庭に設置して、砂が入ったりして実に管理が大変であったのが、現在のように屋上に設置して、当時に比べ衛生管理面で良くなったが、水替え・清掃に大変な労力が必要で、管理費も嵩み、やはり大変なものである現実は同じである。また、危険のないように保育者も非常に気を使っている。

短期間の水浴び程度のものにすることは可能であるが、さまざまな体験を喜びの中でさせてやりたいし、危険ということで避けていたなら大きくなったときに対処する能力が育たない。幸いなことに熱心な保育者が常に配慮し精進して下さっているおかげで大過なくやってこられました。有り難いことです。保育者の熱意と努力を保護者の皆様にもご理解いただきたいと思っています。

人間は心と体でできています。健全な身体と健全なこころがともに備わってこそ幸せな人生がつくられていくものです。

乳幼児期に暑さ寒さに耐えうる健康な身体を作るため、薄着の保育・遊びの保育を提唱してきました。最初は説明しても全く理解されないことも多くありましたが定着させる為にいろいろな工夫をしてきました。

例えばマラソン、裸で乾布摩擦をしたり、なわとび、竹馬、一輪車などに挑戦したり、散歩・園外保育で自然に触れ、暑さ寒さもいとわずいろいろな経験をさせてきました。5歳児になれば歩いて保育園から竜之口山を縦断し元気に歩いて帰ってきます。かなりの距離を、大人もびっくりするほどの逞しさで歩き通します。

体を鍛えると同時に、頑張ったら出来たという喜びを感じ、それがその子の精神力として育っていきます。自然を体感し、色々なことに感動し興味をしめし、夢と創造を逞しくして、自分自身の考える力・空想の世界を育てていきます。

これら全てはその子の生命力として、乳幼児期に育っていきます。この時期はまたとない大事な時期です。この時期に好きなこと、やりたいこと、楽しいことを毎日毎日飽くことなく反復練習する、その中で精神力も培われていきます。

こどもたちは言葉が充分わからなくても、大人の心を読みとります。大人が分からないと思う言葉でも理解しています。大人の心、愛情を受けてこどもたちは成長していきます。乳幼児期の心の栄養です。この時期に充分愛情を注いでやらないと、後からでは意味のないことになります。この愛情と環境によって、こどもたちは自分がどんな風に育つか、どんな人生を歩むかを決めていきます。

楽しかった乳幼児期の思いが、心の中に一つの世界を作ります。一生生き続ける、心のふるさととなるのです。少しでもあたたかく豊かなものにしてあげたいものです。

いま経済的な豊かさのなかで、逆に心の世界が押しつぶされています。そのような中で多くの人が疑問を感じ、時代は大きく変わろうとしています。

人間の幸せとは何か? その原点を見定め、そこから全ては始まる。

いま、人間の心が失われようとしている。殊に、一番大切な親子の絆が欠けようとしている。

米国では離婚・再婚を繰り返し、子どもは確固とした父親像、母親像を持つことができず、親子の関係は希薄になっている。成長した子供たちは心の渇きを癒そうとして、早くに結婚したり子どもを持とうとするが、自分自身が理想の家庭のイメージを持てず、親としてどう振る舞って良いかわからないためつくろうとする家庭も早くに崩壊してしまう。虐待を受けた子は我が子を虐待するようになり、親の常用していたアルコールや麻薬で先天的に問題を持って生まれてくる子も少なくない。

日本も米国に追随する傾向が見えつつある。

希薄になりつつある親子関係を、もう一度見直していく保育が必要である。保育者だけでなく保護者の皆様に、我が子の素晴らしさを実感・再確認していただきたいと思いながら保育に取り組んでいる。

現在1億2千万人の人口が百年後には半分以下になると言われている。風光明媚な気候風土の中で2,000年間培われてきた日本のこころが、外来の唯物思想や拝金主義で失われていく。こころを失えば日本は滅びてしまうとさえ思われる。

皆様が我が子の生命力、感性に関心を持ち、感動することが、日本を救うことにつながるのです。よその子と比べ、競争するのではなく、その子の良さを認め、伸ばしてあげていただきたいものです。

さまざまな行事のなかでの成長の過程を、実感してくださることが本当に嬉しくありがたいことだと思います。その中でより親密な親子の会話が生まれ、絆が深まっていくことが家庭の幸せにつながり、ひいては日本全体の幸せの基礎となります。

今年も、皆様が我が子の成長ぶりに目を見張ってくださることを励みに、保育内容の充実につとめていきます。どうか焦らず、あたたかい目で見守ってください。

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