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本物の保育について考える
| 本物の教育とは何だろう。高島第一保育園の34年の歳月は、その本物の保育を追い求め、保育者と共に歩んできた足跡である。本園に通園下さった子ども達みんなに感想を聞き、これからの保育の参考としたいものであるが、現実にはその夢は不可能に近い。 剣道や野球、バレーボール、ボクシングなどで活躍している卒園児の名前もいろいろ耳にして、非常に嬉しく思うが、その幼児期の思い出話を聞きたくてもなかなかそんな機会には恵まれない。学校は同窓会を開く機会が多いが、保育園の同窓会はほとんどない。また、幼児期というのは人間としての土台造りの時期であり、どんなに大きな影響力を持つ経験でも、忘れられ、目に見えないことも多い。特に成長過程にある10代、20代の人は、現実の活動に忙しく、幼児期の思い出を振り返ることは少ないように思う。本人にさえも幼児期の思い出は謎であったりする。 高島第一保育園では毎年7月下旬に「卒園児の集い」を催し、最近では小学生約150名程が来てくれる。毎年楽しみに待っている人や、遠距離でもはるばると来てくださる人などもある。保育園での友達と交流したり、元担任で退職された先生も来て下さって、参加した卒園児の皆さんも保育園の日々を懐かしく思い出して下さっているのではないだろうか。 そんな活動もかろうじて行っているが、また母の会という保護者会活動も設立以来続けてきているが、そのお世話になった皆様との交流は、子ども達の卒園によって切れてしまう。 園を支えて下さった皆様に感謝し、古い縁故を大切にしたいと思いながらも、新しく入園する子ども達や保護者の皆様への対応に忙しくなかなか思うようにはいかず、申し訳なく思っている。また保育園と疎遠になることで、子ども達の安心できる居場所、心のふるさとが充分形成できにくい現状に心を痛めています。保育園、小学校、中学校と、在籍中は自分の場所に思えても、一旦離れるともう戻れないという体験が子どもの心にどんな影響を残すのかと不安になる。人間関係の希薄化はこのしくみの中でほとんど必然ともいうべき結果なのではないだろうか。 子ども達の健全な成長のためには、安定した成長環境が長期に亘って存在することが必要である。その成長環境の場が、本来は地域で形成されていた。子ども達は地域の自然や大人や文化全体によって育てられ、学んで大きくなった。そしてその土地を離れてもふるさととして懐かしく思い出される、それがかつての地域社会でありふるさとであった。その地域の子育て文化を、保育園が核になって再生しなければならないとずっと考えてきた。 そんな思いと、何より子ども達にその子自身のかけがえのなさを少しでも伝えたいと思い、ここ数年間卒園児や修了児に向けて年賀状を出すようにしている。どの子も大切な存在で幸せに育ってほしいと願っているのだが、住所の入力がなかなか進まず、送った子もあれば送れずにいる子もある。また住所も引っ越しなどで所在が掴めず返送されたものも多い。 保育園では日常の業務が忙しく、昨年の年賀状を整理して、宛先を確認して今年の年賀状を送るべきなのですが、なかなかその整理もつかないまま年末を迎え、子ども達やお世話になった皆様全部に年賀状を送ることができない実情はとても残念です。しかし1枚の葉書でも、小さい時の楽しかった思い出を喚起させ、生きる力を思い出すきっかけになったり、場合によってはその子の支えとなることもあるでしょう。また保育園の保育を子どもの立場からどう感じたかを、大きくなって表現する力をつけてから教えていただければ、保育に携わる者として非常に参考となりありがたいと思います。そして良かった点は伸ばし、悪かった点は改めていきたいものです。保育園の保育は、客観的な評価がなかなかできません。同時にいくつもの保育園を利用することは不可能だし、保育を受ける子どもは、大抵の環境には文句も言わず適応してしまう素直さを持っているからです。また幼児期の経験のほとんどは、人生に大きな影響を持つにも関わらず、なかなか覚えてないものです。そして卒園してしまえば縁が切れてしまう間柄であれば、子ども達が大きくなってからの気持ちや生き方など全く保育園からは知りようがありません。けれども、私達の保育は、生涯に亘って残るものであり、その結果を全く知らないでは、私達の責任を充分果たしているとは言えません。何より子ども達に良く生きてほしいという願いを伝えたいものです。 私は去る1月10日で満78歳を迎えました。2001年を生きる気持ちとして、色紙に「夢往人生(ゆめおうじんせい)」と墨書し、半切に「発想即行動者真心也発創者神之導幸福之根源也」としたためました。私なりの考えや感謝の気持ちを込めて書き、お世話になった皆様、縁あって交流させていただいた方、いろいろな助言やご指導をくださった方に向けて高島第一保育園の「だいいち」や子どもの国、みかど貴ッズの3園の園便りと共に送らせていただいています。そして本当に多くの方が私の人生と関わり、支えてくださっていることに改めて気付き、驚きと感謝を感じています。 昨年は私の健康管理の不注意から、3ヶ月寝たきりで、もう歩くことも不可能に思え、また人生もここまでかと思いました。足がひどく腫れ上がり立ち上がることもできず、移動が困難で手洗いに行く事もできず、病院に行く時も車椅子に乗ったり、おぶってもらったりで、体力も衰え、もうこれまでかと思ったものです。しかし、子ども達が、励ましてくれました。手紙を書いてくれたり、家の前で「頑張って」などと声をかけてくれ、職員や保護者の皆様にも気にかけていただきました。これら多くの心に活力をいただき、助けられて快復につながったと思っています。 私にはまだまだやるべきことが残されており、その課題に取り組んでいかなくてはならない。無駄に時間を空費することは許されないと痛感しました。その課題とは保育園の子ども達の楽しい生き生きした活動の中から生きる力を育てる保育の実践と充実である。その実践者は子どもではなく、保育者であり親であり大人達である。 子どもは何度も言うように真水のように純粋な心を持ち、豊かな個性とそれぞれの使命を持って生まれてきている。その個性をのびのびと伸ばし、その使命を全うさせることが私達保育者の責務である。その責務を果たすため保育者は学び、実践して努力していかなくてはならない。その心を失うと子ども達に大変な迷惑を及ぼすことになる。保育者の最大の学習の場は、保育の現場であり、学ぶべきは子どもの心である。日々の保育の中で注意深く子どもを見つめていれば、子ども達から保育者や大人達に向けていろいろなメッセージが送られていることに気付く。それに気付き、その心に応え、工夫し実践していくことが保育の創造につながる。保育者の個性はそれぞれであり、子どもの個性もさまざまである。同じ年齢のクラスを持っていても同じ保育にはならない。子ども達それぞれの心を学びながら、保育者も自己成長し、保育に懸ける自分の夢を子ども達の協力を得て、実現していく。保育の仕事は実に多岐にわたって忙しく、時間がいくらあっても足りない。こんな大変な仕事は、保育に夢を感じなければできるものではない。意欲を持ち、行動するには体力もいる。子どもは全力で保育者にぶつかってくる。それに応える体力がなければ良い保育も続かない。そして日々の努力を継続することによって成長がある。子どもに愛情を感じて、保育に意欲を持ち、努力を続けて喜びを感じる保育者は、最初は力が足りなくても、子どもが保育者の愛情を感じ、感動をおぼえて、そんな子どもの心に助けられ、良い保育者として成長していく。子どもと心が通じあえば感動も大きく、喜びも大きい。そして子ども達から活力をもらって生気に満ち溢れて心身が健康になっていく。私達の仕事は子どもの真心に支えられていると言える。 そんな子どもの純粋なパワーを、昨年は身を持って感じ、それに応える恩返しをしていかなくてはと決意も新たに毎日を過ごしています。 保育は労働基準法で定められた時間で、その役割が果たせる職種ではありません。保育時間内も、子どもの安全管理や成長のための配慮、保護者への連絡など多忙で、休憩時間もとれない。保護者の皆様が9時〜5時まで仕事をされるとすれば、子どもの保育時間はそれより1時間は増えます。その間を働きづめで、延長保育の当番もあり、なおかつ保育時間外にもするべき仕事が山積みです。良い保育をしなければならないのはもちろんですが、その保育の内容を保護者の皆様にわかっていただく努力や家庭との連携を大切にすることも疎かにはできません。保護者には保育園選択権があり、より良い保育を求めて園を選ぶ権利があるのです。子どもは保育に満足をしていても、保護者に認められないとその保育園は選択されず、良い保育を維持することは難しくなります。 言葉がけや活動を通しての子どもとのコミュニケーション、保育の計画や週案、個人記録表など子どもの成長に対応をするための各種記録書類、清掃や壁面デザインなどの保育室内外の環境整備、保護者との連携のための連絡ノートの記入、そしてさまざまな雑用。それぞれに得手不得手はありますが、保育時間中にこなしきれない膨大な業務を、居残ったり、家に持ち帰ったり、時には休日に仕事に来たりして熱心に仕事してくれる保育者には頭が下がります。 早朝から晩までの延長保育も、保護者の皆様の切実な状況に対応するためずっと行っていますが、そうすると延長当番の保育者以外にも、沢山の保育者が自主的に残って精一杯やってくれています。 これだけの大変な仕事に、さらに保育内容の充実と保育者の質の向上を目指すのは容易ではありません。保育者一人一人考え方も違い、個性も違います。「こうしなければならない」という型にはまった考え方や、他人からの命令では、改善もしばしば形だけのものになりがちです。そのため私も、現場にはあまり口出しをせず、良いところをなるべく褒めたり、よほど目にあまる場合に注意する程度でした。 しかし幸い、今年度は、現場から保育の質の向上を望む声が出ており、ありがたいことだと思っています。1月のリーダー会議で、職員のモラルについて問題提起され、保育園全体でその問題に取り組もうとしています。今まで自分の保育や自分の担当する年齢での保育の在り方に取り組むのが精一杯だったのが、園全体としての保育を考える方向に、少しずつ成長していってくれていると感じます。提起された問題は、一朝一夕には解決しませんが、小さな努力の積み重ねで少しずつ改善していくはずと信じています。 保育者同士の共通理解と連携のとれる、明るく楽しい職場にしていき、それが子ども達のためのより良い環境づくりの第一歩になるように、保護者の皆様が安心して子どもを預けられ、子ども達と家庭と保育者が信頼と愛情の絆で結ばれるような保育園にしていきたいと願っています。 |
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