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2000年9月

本物の保育とは何か、
それに挑戦し続ける高島第一保育園の保育

猛暑続きの今年の夏も、盆が過ぎた。朝晩は涼風がそよぎ、少しは凌ぎ易くなったとは言え、例年に比べて残暑が厳しい毎日が続いている。
しかし、この暑さの中で、子ども達は生き生きと楽しい活動をいっぱい繰り広げ、5歳児の運動会の鼓隊の練習の太鼓の音が園庭に鳴り響いている。
私は自分の健康管理の不充分から6月の初めから3ヶ月、保育園に出勤できず、家で療養する身となり、大変な保育園の現場の中で、職員はそれぞれの責任をきちんと果たし、私の不在を守り通してくれ、安心して療養させていただいたことに感謝しています。
また子ども達には、励ましの手紙や絵をいっぱい頂き、また集会やお散歩の際には、園庭から、道路から「頑張って早く良くなって」の声を届けていただき、職員も7夕の飾りの短冊に願いを込め、健康一番、宮島のしゃもじに私の全快を念じて願いを込めて激励くださり、保護者の皆様にもいろいろ気にかけていただきました。そして、そんな皆様から身に余る大きなパワーをいただき快方に向かうことが出来ました。
2ヶ月半近く全く立ち上がることが出来ず、困っておりましたが盆を過ぎてから杖を頼りに歩行が可能となり、気力も出てきました。本当に有難うございました。
当初は気持ちも落ち込み、再起不能かと不安が頭をよぎることもありました。人間は気力・精神力で、体力もいくぶんかは精神の力に左右されることを実感しました。多くの人達の支えで、未熟なこの私でもこの世の中に生かしていただいて必要とされていると感じ、頑張らなければと思う気持ちで元気になってきました。皆様のご厚意に「涙潤む」心境で、感謝いっぱいです。
健康には気をつけながら、保育の道のために精進していきたいと念じています。
寝ていても、やらなければならない事が頭の中でいっぱいで、子ども達から学んだ多くの事を如何に社会に伝えていくか、保育者の皆様と共にやり甲斐のあるこの仕事に精一杯取り組み、人生を謳歌し、その実践の積み重ねを記録に残し、保育・子育てに携わる人の参考にできるよう、また、子育ての意義と楽しさをできるだけ多くの方に伝えていき、幸せな家庭と真に豊かな社会づくりに役立てていただけるようにしたい、少子化問題の解消のために行政や政治家に是非とも理解していただくにはどうするか、などいろいろ考えさせられた。
社会の多くの方が子育てを知らず、少子化対策に携わる行政や政治家の皆様も理解が不充分で嘆かわしい現状であるが、反面それは致し方ないことであると、わが身を振り返っても思う。保育園を開設するまでは乳幼児の保育について無知であり、我が子の子育てでさえ全く放任であり、申し訳ないことばかりである。
保育を開設した当初も、保育園の保育の在り方について全く無知であった。高島第一保育園開設34年の間に出会った数千人の子ども達、数百人の保育者、保護者の皆様から多くのことを教えられ、また、全国の保育園の中で、保育に熱心な園の先生方との交流や見学、勉強会、また日本保育学会で保母養成校の一流の先生にいろいろ教えられ、保育の在り方を模索して今日を迎え、その中で高島第一保育園の保育内容を高め、実践して来ておぼろげながら保育の意味を実感することができたように思う。
保育とは何か、と明快に言ってしまえないのは、子どもの個性は千差万別で個々の生命力をどう伸ばすかは一つの決まった方法があるわけではないからです。個性を磨くのは自分自身であり、大人が「こう育つべき」と決めてしまうわけにはいかない。人間の内在している生命力を、私達はどう潰さないように配慮するか、どういう環境であれば、その芽を伸ばしてやれるのか、それが私達保育者に課せられた責務である。
学校教育のように画一的に教科書を教えれば簡単で、教科書にはすべて答えが明瞭に示されている。しかし答えがないのが保育であり、人生である。保育者は答えのない課題を一生懸命子どもとの生活の中で取り組み、答えを創造する。そういう保育環境を毎日設定しながらの保育は大変であるが、本園の先生達は、夢を持ち、常に創意豊かに保育に取り組み、子どもに真剣に接して下さっている。この心、この姿が保育者のあるべき姿ではないだろうか。
子どもと共に楽しみ、夢を膨らませ、無我夢中で仕事に熱中する心・姿が子どもの心に伝わっていく。子ども達は、乳幼児の頃に大好きだった先生の名前や顔を成長過程で忘れてしまっても、その先生の心は子どもの中で生き続けている。その深い愛情、見えない心が人間の生涯を決していく、非常に重要な要素であると思う。
そういう深い摂理が、私達が子どもに学び、教えられてきたことである。子ども達から私達は生きる力を授かって幸せな人生を創造する第一歩を踏み出す。子ども達に触れ、保育に精一杯努力する中で一番恩恵を受けるのは努力している当の保育者ではないだろうか。私も保育という仕事の中で、子ども達や多くの皆様から本当に幸せいっぱいを受け、病気も快方に向かって頑張れる幸せを実感している。これが34年間の保育への取り組みの成果と、生きる力を授けていただいた恵みに感謝しています。
保育園の開設以来、「保育とは何か」という問いを持ち続け、私なりに課題を設定し、今日も課題に取り組み続けています。
岡山大学名誉教授林秀一先生との出会いは、この問題探究の一つの手がかりとなった。
林先生は近江聖人中江藤樹先生の研究をされ、そのために藤樹会を組織され、研究に励まれ、夏季研修をなされていた。その会にお招きを受けて藤樹先生を知ることができた。先生は日本に於ける乳幼児教育の権威者であり、胎教の大切なことを理論的、実践的に唱えられ、「3つ子の魂百まで」の大切な意義を教えていただいた。保育学者の中には、中江藤樹先生を知らない人が殆どで嘆かわしい現状である。「花一杯歌一杯」の保育目標を昭和46年設定し、今日なお私の心に生きている。
保育の中で絵本とは何かということも、保育界の現状の中から疑問一杯であった。そんな中でこどものとも社との出会い、その意義を知ることができた。社長さんに毎月1回の職員研修をしていただき、絵本好きな保育者に恵まれ、絵本の保育を展開するきっかけとなった。福音館書店を知り、松居直先生にも懇意にしていただき、セミナーにも6〜7人位継続して参加し絵本の保育を定着することができた。
保育園の園児以外にも絵本の大切さを理解していただくために「こばと文庫」を開設して12年を経過する。
今年の8月3日・4日の新幼児研究会の研修では、分科会で高島第一保育園が「ことば」というテーマで研究報告を依頼され、絵本の保育実践とアンケート調査をもとに主任の北江紀子先生が発表してくださり、好評を博した。
昭和58年頃明治図書から「絵本の保育」「音楽の保育」「体力作りの保育」を出版しています。近々再版したいと考えています。
また新幼研で発表した絵本の取り組み、保育の在り方を1冊の本にまとめて保護者の皆様にわかりやすく編集したいと考えています。
音楽の保育についても、開設当時はピアノの弾けない保育者がほとんどで、歌も歌わない音楽環境であった。中尾節子先生に音楽講師として来ていただいて子どもと担任と一緒に歌を歌う環境を少しずつ整備してきた。
また体力作りについては就実短期大学の宗高弘子先生に参加いただいて10数年、職員で研究し日本保育学会にも発表し続けて、昭和57年日本保育学会研究奨励賞をいただいた。
遊びの保育の権威者である守屋光雄先生にも度々高島第一保育園に来ていただいて研修もし、遊びの保育を定着することができた。
お母さん方に安心して就労していただくには、延長保育などの便利さのみでなく、子どもの健やかな成長も大切にしたいと考えています。保護者の皆様も子育てを大切にしておられる様子で、私達も頑張り甲斐があるというものです。いろいろな課題にこれからも積極的に取り組み、本物の保育とは何かを問い続け、挑戦し続けていきたいと考えています。今後とも、ご理解、ご協力お願いいたします。

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